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1.目次

前書きイントロダクションはじめにプロローグ紺碧の空菊あるいは苔酢を入れさせるな刀と鋼徹夜したのにな男の保母は魔女狩りに遭うインキュバス女体愛撫皮肉ってやれBe lapis-lazuled陶器に胃袋を描く以上のタイトルはPetit abécédaire illustréつまり小さな…

2.二人称小説

序章 あなたは本を読んでいます。題名は「二人称小説」。そう、この小説です。なんとこの小説は読者のあなたが主人公なんです。おめでとう、やったね! 人が祝ってやってんのに無言かよ、いい度胸してんなあ。おい、ちゃんと喜びやがれ。声に出してありがと…

3.未完成小説

4.我愛爾

(原作:S.Johnson『ALL I NEED』)発端 火曜日の昼下がり・喫茶店。店内は閑散としている。客の姿は見当たらない、窓際の席で向かい合って談笑するカップルの他は。男はコーヒーを啜ってから、新しい話題を持ち出す。「──おまえがもっとブスならいいのにな…

5.恋人と別れる500の方法

つきあっているオンナと、別れたくてしょうがない。 どうにか穏便に今の関係を終結できないものか。穏便に終わらせたい。逆恨みされたり、自殺されたり、ストーカーされたり、秘密をバラされたりしたら困る。後腐れなくオサラバしたい。永久に。 そこで俺は…

6.瓦斯事件

緒実充三は名探偵気取りの見習いコックである。蟻に似た顔の彼は、甘ったるい物に目が無い。 ある晴れた秋の日だった。近所の喫茶店へ出かけた彼は、激甘お汁粉を飲んでご機嫌だった。そんな時、その事件は起きたのである。 のんびり過ごしていると、数人の…

7.五七五事件

「犯人は北鎌倉の香取哉」 夏休み前日、二松学舎高に転校する森が黒板に記した。五月七日林間学校事件の鍵と書き添えて。 おぞましい事件だった。くさいなあと思い窓から庭を見ると、白だったはずの布団が土色に染められ紙と共に遺棄されてたのである。飯を…

8.パパと結婚するんだよね?

「ミムちゃんは、大きくなったら何になりたいのかな。お嫁さん。そう、お嫁さんか、無邪気でいいね。あのね、ミムはね、大きくなったらね、あのね、パパのお嫁さんになるの。そう、パパのお嫁さんになってくれるのかい。そう、パパと結婚するの。うれしいな…

9.The Late Great Johnny L.

ボブ・ディランは一緒にマリファナを吸った。 キース・ムーンは一緒に酒を呑んだ。 エルヴィス・プレスリーはグレイスランドでコケにされた。 フランク・ザッパはギターで参加した。 ダリが落書きの個展にわざわざ出向いた。 フィル・スペクターがレコーディ…

10.パワーズオブテン

0 ……この光景を1メートルの正方形で囲み、10秒ごとに10倍ずつ離れて見ていくと視界は10倍ずつ広がっていくことになる。 10メートル四方の広さ。10秒後に正方形はこの10倍になる。(略) 100メートル四方。人間が10秒で走る距離。ハイウェイの車や停車中の…

11.阿蘭陀Language

どうかOranda Rangeと発音して下さい。 小説に説明をしてはならないのだそうだが、うぬぼれは誰にもあるもので、この話でも万一ヨーロッパのどの国かの語に翻訳せられて、世界の文学の仲間入をするような事があった時、よその読者に分からないだろうかと、作…

12.阿蘭陀 Launguage 2

The editing technique is an extension of the composition ─Frank Zappa 春の日のさした往来をぶらぶら一人歩いている。日比谷公園を歩いていた。重い外套にアストラカンの帽をかぶり、市ヶ谷の刑務所へ歩いて行った。看守さえ今日は歩いていない。空には…

13.芥川賞

一 堀川の大殿様のやうな方は、これまでは固より、後の世には恐らく二人とはいらつ しやいますまい。 ──芥川龍之介『地獄変』より── 堀川保吉が點鬼簿に加はつてから十年ほど經つた或夕べである。神田神保町の表通りに面したカツフエの二階は、平生通り「ゴ…

14.熱目漱雪『夢十夜(ゆめじゅうよる)』の変奏

ジョルジュ・ペレックという作家の作品に『煙滅』というリポグラム小説がある。リポグラムとは文字落としという言葉遊びの一種。件の『煙滅』はフランス語における最頻出アルファベット「E」の文字を一度も使わずに書かれている。当然翻訳は不可能だと長ら…

15.小松軍曹と市尾伍長

S湖沼での野営時、わたくしは市尾伍長と焚き火を守っておりました。そうして二人きりで文学の話をしておりました。 わたくしにはこの時間がとてもおもしろく感じられました。なぜなら、他に文学の話のできる兵士がいなかったからです。文学なぞ女々しい室内…

16.16小説交響詩

Perc.=パーカッション/Trp.=トランペット・Sax=サックス・Hr.=ホルン・T-Tbn.=テノールトロンボーン・Bs-Tbn.=バストロンボーン・Tuba=チューバ/P.=ピアノ/Vio.1=第一ヴァイオリン・Vio.2=第二ヴァイオリン・Va.=ヴィオラ・Vc.=チェロ・Cb.=…

17.Rael1/Milk

ニューヨー「ミルク。タレント・マスターク」ズ・スタジオ。1967年6月。──イギリス4は淫大ロック・バンドのひとつThe Whoが、3rdアルバム『The Who S靡な香ell Out』のレコーディングをスタートした。 アメリカに来て最初のセッションは、アルバムのハイラ…

18.はやい

林は(略) 教育実習(略) 母校の中学で(略) 国語科の授業(略) 授業は(略)「(略) わからない事があれば、あとで個人的に(略)」 一人の女子生徒が(略)「早いと速いの違いが分かりません(略)」「早いとは(略) 英語でearly(略) 速いとは(略…

19.生

生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生生…

20.動物十科

A わいのおふくろはワニ皮サイフになった。わいはもちろん泣きに泣いたが、おやじもくやし涙に暮れておったもんや。あの屈強なおやじが、やで。そしていっつも、おやじは不機嫌そうにつぶやいとったっけ。「糸くずのようなあの連中め、今度来たら必ず殺した…

21.「博士の異常なる愛情、又は私を如何にして心配するのをやめて水爆を愛するようになったか」という映画の題名の長さを超える「マルキ・ド・サドの演出によりシャラントン精神病院の患者たちによって演じられたジャン・ポール・マラーの迫害と暗殺」という題名をさらに凌ぐ世界一長い題名の小説を創作して文学史にその名を刻もうとする作家が歩んだ生涯を素朴簡便なる筆で描く、万人共通の問題である人生にまつわる悲しくも微笑ましい、宇宙的壮大さと意味深長な言葉を備えた物語

彼は生まれた。無意味な人生を送った。死んだ。

22.ネクタイ

一組の夫婦。晩酌をしながら、夫が何かに気付いて妻に問いかける。「なんだそれは」「は?」「なんだよそれ。なんだそれは」「なんだって…指輪よ」「そんなこた見りゃわかる。どうしたんだ」「え」「どうしたと聞いている。そんな物を買う金はおまえにはない…

23.ポーラ

夕暮れ 安アパートの一室。窓から差し込む強烈な西日。室内、オレンジ色。 チェンバロ、リコーダー、フィドル、リュート。めくるめく煌めく音楽。メリー・ゴー・ラウンドのバック・グラウンド・ミュージック。跳ねっ返る高い音。おもちゃ箱をひっくり返した…

24.・

生育学恋働愛婚産老殺囚病 朝起洗尿食磨糞出歩馬買当金走駅乗着降尿駅走 昼食店買歩駅乗着降駅歩帰尿振振振打壊止 夜呑尿食観屁敷寝眠起尿吐呑浴眠溺死

25.電卓による官能小説

0105+067 …①=172-106 …②=66+14=80 …③-26=54+54=108 …④-39=69 …⑤-41=28+28 …⑥=56+10=66 …⑦+11-11+14 …⑧+14-19-19 …⑨=56-30=26 …⑩+55=81-81 …⑪ 【解説】 ① 男と女が出会う。 ② 女が言う、「172(いーナニ)してるじゃん。1…

26.THE QUICK BROWN FOX JUMPS OVER A LAZY DOG

[横線1本と、その中間から下に伸びる縦線1本][同距離を平行する2本の縦線と、それらの中間を繋ぐ横線][同距離を等間隔に平行する3本の横線と、それら横線の端点を左側で過不足なく結ぶ縦線] [右下に読点が突き刺さった丸][同距離を平行する2本…

27.実践倫理学レポート

おことわり 実践倫理学の授業時、担当講師から課題が出されました。 講師が「『偽善』に就いてレポートを本日中に仕上げ、メールにて送信せよ」とホザきました。 そこでパソコンに向かったものの、なぜかバックスペースキーが利かず、入力ミスは全てデリート…

28.サルタンバンク (ピカソによる)

旅芸人の家族(6人)は野原で休憩していた(次の興行先へ移動している最中だったのだ)。広がる青空と樹木一株も立ってない草原。 デップリと肥ったペペおじさん(道化師。41歳)は3人の子供たち(パブロ(軽業師。16歳。得意な芸は玉乗り)とホセ(同じく…

29.睡眠装置としての小説

この小説は、ある一人の女が涙を流れる滝の様に流したのは、肩が凝り固まり、双肩に双肩を担いでいる様に重く、重さに屈服すれば次第に身体が沈んでいくのが自然であるから机に伏し、眠りに落ちる感覚を伴ないながら、眠い、睡魔は万人に襲い、天才にも例外…

30.『小松軍曹と佐藤兵長』他一篇

あわれな市尾伍長のことを誰か覚えていますか。文学を憎む上官に刃向かい、「ペンは剣よりも強し」と主張しながら非業の自死を遂げた、あの兵士のことを。横暴な小松軍曹に封殺されたも同然のあの才能を。 今度は、わたくしの番です。 ある日の午後、わたく…